猫かぶり王子様






ヒョイっと覗いてみると…


「見てっ大滝くん!!!」


「こっちのクラスの方まで来るなんて珍しいよね!!」


「かっこいいー!彼女いるのかなあ…」


女子3人組の話を盗み聞き。


(“大滝くん”…?)


今聞いたばかりの名に、フラッと引き寄せられる。


「きゃー!ほら、大滝蓮くんだよっ」


群がる女子の中、微笑みながら歩く長身の茶髪男子───…


「…あの人…」


昨日のことが頭の中に蘇る。


(…昨日の人だ!)


忘れかけていた、恩人の顔を確かめる。


(背が高いから先輩だと思ってた…。てゆうか超目立ちすぎ!昨日会ったときあんなに王子様オーラ出してたっけ?)


キャーキャー言う女子達(咲湖を含む)をよそにそんなことを考えながら、もうすぐ近くまで来ている“大滝くん”を眺めていると。


────バチッ───。


大滝くんと目が合ってしまった。…


(あれ?)


目があったとき、一瞬笑ったように見えた。


ぼーっと立っていたら、その大滝くんの腕と自分の肩がぶつかってしまった。


「おっとごめんね、…」


「い、いえ…」


その時。


「放課後、体育館に来て」


自分にしか聞こえないくらいの声で、耳元に囁いた。




「じゃ」





また、何事もなかったかのように行ってしまった恩人の背中を見送りながら


「放課後、体育館?」


あたしはそうつぶやいた。