〜 side 茜 〜





「茜ちゃんおはよーう!」


「あ、おはよー」


カエル事件の翌朝。
短めでふわふわな髪をゆらしながら、先に教室に着いていたあたしに小さく手を振って駆け寄ってくる女の子───高峰 咲湖(たかみね さこ)。


高校に入学して、1番最初に仲良くなった子だ。


身長が小さめで、ほんと妹みたいなかわいい子なの!
ただ…


「今さっき、すっごいイケメンが私の前歩いてたからずーっと眺めてたんだあ♪♪」






極度のイケメン好き。






あたし達が通うこの北城学園には、美男美女が多く集まっている。
咲湖は高校入学して3日で、数多くいるイケメンをチェックし終えたんだって…


「へー、どうゆう人だったの?同じ学園の人?」


「うん、身長が高くてスラッとしてて、髪が金に近い茶色で……てゆうか、すごい有名な人だよ!!!1組の大滝 蓮くん!」


「有名?」


「特に有名なのはバスケの強さかな?……やっぱ、茜ちゃんは知らないよねぇ…」


ため息を吐きながら咲湖はそんなことを言う。


「あの大滝くんを知らない人はあんまりいないと思うよ?」


───それはイケメン好き業界の中だけではなくて?


「大滝くん…かぁ。聞いたことあるようなないような…」


あたしがそう答えたそのとき、廊下で女子の騒ぐ声が聞こえた。