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───ここは、校舎と体育館にあるちょっとした空間───。
「…本当に、ありがとうございました…!!」
ほーっと息をついて、危機から救ってくれた男子に礼を言う少女…────上坂 茜。
「別にいいけど…」
あきれ顔の男子。
「こんなところで大声出してんじゃねぇよ…。襲われでもしてんのかと思った」
「いや実際に襲われてましたから!」
「カエルにな」
言いながら、ゲコッと鳴くカエルをつまみ上げる。
「こっちに向けないでくださいっ」
涙目でカエルを睨み付ける。
「カエルにそこまで怯えるか?」
「昔から虫は嫌いなんですっ」
「虫じゃないけどな?」
「か、カエルも虫と同じようなものですっ」
「…かわいいじゃん」
カエルの顔をのぞきこんで言った。
「なっ…!!よくそれをかわいいなんて言えますね!?」
心底あり得ないと言う顔をする相手を見て、笑みを浮かべる男子。
「おもしろいね?」
「おもしろくない!」
「ぷッ…名前何て言うの?」
「……茜です」
「覚えた。じゃーまたね」
そう言って去っていった男子の髪は、夕焼けに照らされてキラキラ光っているように見えた。
───その男子の名を知ることになったのは、その翌日のこと────。
