じっと見ているのに気づいたらしい。二人が近寄ってくる。

「来てたんだ、佐藤さんと望月さんと……えっと」

「岸、岸妙です。海岸の岸に、神妙の妙で、たえって読むんだ。個人的に話すのは初めてだね」

「岸さんね。よろしく」

 織本君と妙ちゃんが仲良く話している。その様子にチクリと胸が痛んだ。

「桜田君の班も来てたんだね」

「あぁ、お土産一気に買おうと思って。他のやつらはあんま興味なしみたいだけど」

 偶然あったことにちょっと嬉しくなる。

「この後の予定は?」

「あぁ、芦ノ湖のフェリーに乗って、水族館に行くつもり」

 答えた桜田君の内容に妙ちゃんがはしゃいだ声を上げた。上目遣いに織本君を見る。

「そうなんだ!じゃあ一緒に行こうよ!私たちもそこ行くの」

「あぁ、別に。京太いいよな?」

「別にいいけど」

 お買い物を済ませ、フェリーに乗り込んだ。

「おい、ここ滑りやすいから気をつけろって」

 桜田君が案内板を読み上げる。

 大丈夫だよ、と言った瞬間足元がつるっと、あれ?滑っていた。
 衝撃に備えて目を閉じる。

「ったく、言ってるそばから転ぶなよな」

 ガシッと腕を掴まれた。

「本当にそそっかしいぞ、佐藤。いつ怪我するかわかんないんだから気をつけろよ」

「あ、ありがと」

 掴まれた手の感じが、遊園地の織本君と重なる。思い出して、顔が火照った。

「うわー!芦ノ湖って意外と大きいね,織本君」

「ちょっと雨降ってるから見にくいけど、晴れてたら景色キレイだろうね」

 妙ちゃんが織本君を独り占めして、外に出たり、移動したり、と振り回している。織本君も楽しそうにしていた。

「あれ~杏樹。もしかしてやきもち妬いてる?」

「そ、そんなこと…ないよ」

 二人の様子がなんだか…。チクチクとした胸の痛みに耐えながら必死で笑っていた。

 ***

「ふぁー疲れた~」

 部屋に戻ってくるなり、花香がベッドに倒れこんだ。私も腰掛ける。

「確かにね」

 一方妙ちゃんは疲れているというより、むしろ上機嫌だった。

「織本君って話したことなかったけど、優しくって話しやすいね!」

 うんそうだね、曖昧に頷く。
 妙ちゃんと織本君の仲がすごくよかったことにチクチクと胸を痛め付けながら、夏休み箱根合宿は終わった