「みなさん、中間試験の勉強は進んでいますか?」

テスト一週間前をきって、みんなの緊張が高まってきていた。

古典担当の野坂先生は、のんびりとした性格をしているのに、テスト前になると性格が変わることで有名なのである。

「はいはい、立ち歩かないように」とのんびり注意するのが「こらぁ!!何立ち歩いてんじゃ、くそガキ!テスト勉強せんか!」に変わるのだ、十分恐い。

それなのに目をつけられるとはね…。

 ***

授業中ぼーっとしているところが先生の気にそぐわなかったらしい。あきらかに私を狙って指名してきた。
元々古典は、よく言えば得意じゃなく悪く言えば嫌い。
それで、わかりません、って答えたり、間違えたりすると嫌な感じの笑いを浮かべるのである。何度もカチンとした。

日頃ののんびりさは絶対演技に違いない。花香とそういう結論に達するほどの変貌ぶりの先生を次第に私は嫌いになっていった。

また今日も指された。
うんざりしながら席をたつ。

「それでは〜、三行目の筆者の感情を…」

わざと難しいところを選んでくるところにもイライラする。

ちょうどその時、先生が盛大な咳をして横を向いた。

「杏樹、これこれ」

前の席に座っていた花香がその隙に自分のノートを指差して見せてくれた。

「その時の筆者の意図は…です」

すらすらと答えた私を忌々しそうに見て座らせる。

「ありがと。今度借り返すね」

片手で拝みながら座ると、手で丸をつくってこちらに振った。

***

「でもほんとにウザいね、野坂」

「ほんと,ほんと。大丈夫だった?佐藤さん。顔赤いよ?」

最近では授業中の嫌がらせにみんなも気づいて同情してくれるようになった。頬が火照ってことを気遣ってくれる人もいて、今ちょっと熱っぽいんだ、とみんなには言ってある。

中間までキツいなぁとため息を吐きつつも、織本君にドキドキし続けていて一目でも見たいから休まず学校に来ている現状だった。