「ほら、行くぞ」

掴まれてる男1から手を離し、奏太は私の手首を掴んで走る。



自販機からだいぶ遠ざかり、近くの公園の中に入って手首を離された。


「陽愛、お前はバカか。なんでこんな夜に1人でいるんだよ」


不機嫌丸出しの奏太。


でも陽愛って呼んだ!ちょっとウレシイ。


「ちょっと先生に手伝いを頼まれて・・・。それで遅くなって絡まれた」


「はぁ?俺が近くを通らなかったら、今頃どこに連れてかれてたか」


「・・・・ごめんなさい」


「謝るんじゃなくて、礼を言って欲しーよな」

呆れ顔をして、そのへんにあったベンチに腰を落とす。


「ありがとう、奏太。」

「まぁ、礼だけなら子供でもできるわな」

いきなりニヤニヤしながらそんなことを言い出すこの男。


なにが目的なの?


「はい!?お礼だけじゃ足りない、と・・・?」


「何して貰おうかなー」


私の手をグイっと引っ張って、顔を近づけてくる奏太。


な、な、なんかさっきの男共よりも、奏太の方が怖いんですけどー!!


「この借りはいつか、返して貰うからな」


ニヤっと笑みを浮かべ手首を離す奏太。


私の手はやっと解放された。



「奏太が助けてくれるって思わなかった。」


「は?なんで」


「だって、人の不幸は蜜の味って感じで知らん顔して、通り過ぎるイメージあるし」


「俺はそんなに薄っぺらい男じゃねーぞ」


「てかてか!なんであたしのこと“それ”呼ばわりしたの?

すっごくイライラしたんだけど!」



「助けてもらった分際で、イラついてんじゃねーよ」







その後もいろんな会話をして、結局家まで送ってもらっちゃった。


奏太って優しいんだ、意外と。


学校では性悪なのに、さっきは助けてくれたし。


なんか調子狂うわ。



ま、でも一件落着だったしいっか!