吐く息は白い
ガラガラとトランクを引きながら空間魔法の道具を備えた正門に向かう


「サバティエ君の家に行くって本当ですか?」

「あぁ、そうだよ。なんか凄い田舎らしいけどな」

「…………」

「どうした?」

「別に……」


フェイトから視線を逸らしてベスは黙りこむ
最近、何かを考えるようにベスは沈黙する

そのまま何も聞けずに正門にたどり着いてしまった


フェイトは距離を計りかねている
最近は特に……


ふと、思い付いてフェイトはマフラーを外した
それを寒々しいベスの首もとにフワリと巻き付けた


「フェイト?」

「やるよ、寒いだろ?」


柔らかな毛糸のマフラー
落ち着いた橙色が暖かそうだ
実際、先程までフェイトが巻いていたそれはまだ温かい

華奢な指が何かを確めるように毛糸でできたマフラーをなぞる


「何だよ、気に入らなかったか?」
「そんなことない」


すぐに答えがかえって来て何となく頬が熱くなる
フェイトが言葉に詰まっていると、ベスはフェイトの目を真っ直ぐに見つめた


それは何故か久しぶりな感覚に思えた
つい最近までよく見ていたはずの青い瞳


「じゃあね………」


さよならはどこか幼い物言いで


「またな………休み明けに」


フェイトが笑えば、ベスも小さく笑って門へ向かった