「あ、レイ。ちょっと待て」

若干鼻声交じりに呼ばれ、振り返ると文庫本から目を離してこちらを見ている。
そして、彼は眉間に皺を寄せながら、訝しそうに聞いてきた。

「明日、休みだろ?」

「…?」

携帯をブレザーの上着のポケットから取り出してから、ディスプレイを開くと、そこには今日の日付、とその横に金曜日と表示されていた。

「ケータイ見ないと分かんないのかよ」

「時間とかサボる日とか…全部携帯任せなんで」

明日はお休みですね、と携帯をポケットに戻すとカタリさんは立ち上がって周りにある資料の中から何冊か引き抜いた。

そして、振り返るなり、真剣な顔になりながら言う。

「明日、恋人っぽいことするからな」

「…え?」

そういえば、付き合ってたんだっけと頭の端で思いながら、つい頷いてしまった。

「いいですよ」