「…サボるなよ」

「なら、泣かないでくださいよ」

1度あることは、2度あるらしい。

カタリ母の前で恋人告白をしてから、数日後が経った今日。
授業をサボることが、格段に難しくなってしまった。

廊下には糸崎家の使用人が監視するかのように、立つようになる。
彼らの隙をみて授業を抜け出すのは安易なことじゃない。
サボろうとして、もう2、3度注意を受けてしまった。
適当に口実を言ってその都度回避していたが、前のようにはいかないらしい。

「生徒会長…」

「カタリだ。せめて付き合う期間内は、名前で呼べ…っ」

「…分かりました、カタリさん」

カタリさんの潤んだ視線は、文庫本に注がれている。
タイトルも作者も知らないので、どんな内容か分からないが、現に人が泣いているのだから、泣けるのだろう。