とくりとくり、と緊張が全身をおおった。
引かれた右手が少し痛い。
手を引かれるのは今日で何回目だろうか。

静まり返る部屋の中。
目の前には校長先生でもあるカタリさんの母、糸崎ミチカさん。
私の右にはカタリさん。
まるで、踏み入れちゃいけない領域に来てしまったように、空気が重苦しい。

「仕事中に悪いんだけど、今は母さんに用事があるんだ」

「…用件なら手短に。…その子は?」

カタリ母は、持っていたペンを机に置き、視線を私に向けた。
何を言っていいか分からず、視線を外すことも出来ずにいると、カタリさんと手を繋いでいた感触が消える。

そうしているうちに、彼は私の肩に手を置き、抱き寄せた。

「!?」

「この子は俺の彼女の一澤レイ。電話じゃ取り乱したが、俺は今、彼女と一緒にいたい」