俺様主人と忠実執事

「よし、じゃあ終わったら起こしてくれ」
「ああ」
そう言うと、愁は書斎にあるソファーで眠ってしまった。
愁は硬派を連想させる、綺麗な黒髪。
目は軽いつり目になっていて、俺様気質。
一方執事さんは、黒に限りなく近い紺の髪に、切れ長の優しそうな目。
なにより二人とも、整った顔立ちをしている。
ああ、愁攻め萌え……。いやいや、本人目の前に居るんだから気をつけないと。
緩みそうになる頬を軽く叩くと、気合いをいれた。
勉強を開始して数分すると、ドアをノックされる。
「失礼します」
入って来たのは、執事さんで、手には紅茶とスコーンがあった。
「……また寝てらっしゃる」
丁度ドアから死角になる場所に居るのに気づく執事さんには、いつもびっくりする。
「相変わらず愁には手厳しいですね」
「それが仕事ですから」
執事さんは机に紅茶を置き終えると、愁が寝ている方へ。
毛布をかけずに眠っているのを分かっていたかのように、薄手の毛布をかけたのが見えた。
その後ろ姿が、とても、優しく見えた。
「……萌え」
「?
何か言いました?」
「…………なんでもないです」
無意識に出た言葉にドキリとしながらも、勉強に再度集中する振りをした。
執事さんはお母さんだ。厳しくしても結局は可愛くてついつい甘やかしてしまう。
そんな感じがまさに、萌える。