「今日はなにを着せようか?梓」
「や、やめてください!本当に女装だけは嫌なんです!」
「駄目だ……ん、これなんかどうだ?」
ハンガーに掛けてある衣服を適当に取り出して見せると、いつものことながら
「嫌です!!女装以外ならなんでもしますといつも言っているじゃないですか……!」
と、まあ毎度のセリフを言っている。
そのセリフに返す俺の言葉も全くかわらない、いつ通りだ。
「………不満があるようだな。梓ちゃんとでも呼んでやろうか」
「その嬉しそうな声はなんですか!?」
やはり、Sをいたぶる方が楽しみがいがある。
本当に嫌ならこいつは本気で逃げれるはずだが、それをあえてしないのは気を許しているのか諦めているのか……。
まあ、俺は別にどっちでもいいが。
それよりも重要なことがある。
「…………おい」
「なんですか愁様」
梓が後ろに居る俺に問いかける。
俺の中に居た小さな俺が顔を覆って悲鳴を上げる。
その悲鳴を上げた小さな俺がもう一人の小さな俺に蹴られて消える。
「……………………太っただろ、お前」
それは、とてつもなく俺には重要なことだった。