厨房から良を運び、客室のベッドへ寝かせてやると、部屋を出た。
「愁様」
「お前が言いたいことは分かってる。やり方が甘いっていうんだろ」
さっき梓がやってたジト目とかいう奴を真似して言う。
「………………」
そしたら何故か照れられた。
「……」
ない。ないない。
ここで照れる意味。
<梓へ の 好感度 が 、マイナス 200 ポイント に 達 した 。>
「私もそんな趣味はありません。うっかり顔がニヤけただけです」
<愁 様へ の 好感度 が 、 プラス 10 上が った 。 合計 90 ポイント に なった。>
上がった、だと……。
「引く」
「そんなことはどうでもいいのです!」
「まさか、愁様が……人に情けをかけれる人だったとは……。私はもう嬉しくて嬉しくて」
しくしくと泣き始める梓が、なんだか見ていて気持ちいい。
泣いている涙はきっと目薬なんだろうが。
泣いている人間を見るとどうしてか、もっと泣かしてみたくなる。
……のだが、梓がこんなに素直なのが逆に怪しい。
「気持ち悪い泣き真似はやめろ」
「泣き真似ではありません。本当の涙です残念ながら」
なんなら舐めて確かめますかと付け足して言われたが、いうまでもなく断った。
というか、ただの変態じゃねえかそれは。
俺は疑うような目で梓を見ると、とりあえず梓のほっぺたを引っ張った。
「とりあえず、今から反省会の時間な」
夜はまだまだ長い。
それにーー。
たまには子供の戯れ言に付き合うのが、大人ってもんだろ?
勘がいいのか悪いのか。それを察した梓の顔は真っ青で。俺はつい口角が上がった。