俺様主人と忠実執事

「いや別に」
「そうですか」
お互い沈黙になる。
俺はわざとらしい咳払いをすると、紅茶を口に含んだ。
「なんか用?」
「良様はどちらに?」
「……厨房じゃないのか?」
そう返すと、梓は考えこんだ。
また良とぶつぶつ俺の愚痴大会でもするのだろうか。
朝っぱらからもうすでに散々聞かされてるから、もうお腹一杯だ。
というか、愚痴をこぼしたいなら俺がいないところで言えばいい。
本人の目の前で言いたがるこいつは、本当にいい性格をしている。
そのねじ曲がった性格を正してやろうか、と何度思ったことか……。まあ、めんどくさいから不実行だけど。
つか、まだ考えてやがる。
「俺に用がないならさっさと仕事に戻れ」
「……」
話を聞いちゃいねえ。
……これじゃ時間の無駄だ。
「ほら、さっさと……」
「ご主人様、良様は強いですか弱いですか」
「は?」
強いか弱いか?
「なんの話だよ」
「お酒ですよ」
いや、なんで酒が強いか弱いかの話になるんだよ。
「どっちですか!!」
「……弱かったような気がするけど。それがなんだよ」
切羽詰まったような声に、押されるように答えると、梓は顔を真っ青にした。
その時、ドアがノックもなしに開かれた。
「大変です!良様がお酒に酔われて厨房が大変なことになっています!!」