俺様主人と忠実執事

……………………
ブランコに乗る。
もう5時を回っていたため、公園は夕日の色に染まっていた。
もちろん子供も誰一人いない。
俺は一人、その公園を支配していた。
「……」
帰りたくない。
その思いだけが心にあった。
「……もうあんな家、帰りたくない」
まるで変わってしまったようだった。
……梓が来てから。
俺の生活はガラリと変わった。
あいつが来る前は楽しかったのに、あいつが来てからは、とても楽しくない。
まるで、みんなあいつに弱みでも握られたような。……そんな嫌な感じ。
ギギィ……とブランコの音が静かに響く。
気づいたら
あるはずのない一つの影が、俺の前に立ちはだかった。
「ここに居たんですか」
「……何しに来たんだよ」
俺はその声の方を見ないまま、ブランコの鎖を掴んだ。
嫌だ。
俺はまだ帰りたくない。
そんな意志を感じとったのか知らないけど、そいつは笑いだした。
「変な人ですね。見つけてほしかったのではないのですか?ご主人様」
馬鹿にしたような声に、ムカッとくる。
しかし、何も言わなかった。
「あれ、言い返して来ないんですか」