「……様!愁(しゅう)様!いい加減起きてください!」
「…………どうせまだ6時くらいなんだろ?今日は休みなんだから静かにしろよ」
「ですがっ!その、言いにくいことなのですが」
ため息を吐くように小さく息を吸った音が聞こえた。
「――許嫁の方がお見えになりました」
「許嫁って……」
そんなこと聞いていない。
起き上がってなにか文句を言ってやろうとベッドを立つと。
丁度ドアの入り口で立っている人と目が合ってしまう。
いつから居たのか、普段着を着たよく顔の知ったやつが苦い表情を見せた。
「なぁ、愁。なんつー格好で寝てんの?今何月か分かってる?」
「分かってるけど」
「そのわりには自覚が足りません。あれほど脱ぐなと言ったのに約束したその日に破って……」
ぶつぶつと何かを言って頭に手を当てている。相当頭にきているのだろう、顔が青くなっていた。
「風邪引くなよ?いくら3月だからと言ってまだ暖かくないんだし」
そう言ってデコピンをされる。
その格好というのは上半身裸のことをさしているのだろう。
二人は仲良しこよしにまたぶつぶつと話している。
過保護すぎる執事と幼馴染み。
正直、朝っぱらからこの二人を相手にするのはめんどくさい。
せっかくの休みも時間の無駄になってしまう。
それでなくとも毎日6時間しか寝させてもらえないというのに。
そう考えているうちに、腹の虫がなりそうだったので先にシャワーでも浴びてこよう。と出てくる欠伸をかみ締めた。