親が、遠くにいて帰って来ないからかどうしてか。
兄が親の変わりだったからなのか。
さっきの映像がとても、頭をズキズキとさせる。笑っている姿を見るのは毎日だが、それとは違う笑み。
俺は見慣れない表情に、戸惑いが隠せないでいた。
どす黒いなにかが心を取り巻く。
それはとても醜いなにか。
解放感がある場所。
まだ肌寒く、人は居ない。
ある意味、冬の屋上は貸し切り状態となるからだ。
「さむいなっ!!」
「兄さん、意味のない大声をださないでよ」
「おう、すまんな」
「……」
相変わらず、騒がしい二人だな。
そんな二人を横目で見て、パンを頬張った。
遠くに視線を向けると、雪溶けした水たまりが、空を映し出す。
気づかなかったけど……、今日は青空だったんだな。
映った水たまりを見て気づいた。
そういえば、空になりたかったっけ。
昔、いや、まだ小さい頃。
俺は空になりたいと思っていた。
別に自殺願望があったわけじゃない。
けど、あの青い空になって、この世界を見てみたかったんだ。
「なにボーっとしてるんだ?」
「別に」
「ふーん。それうまいか?味見させてくれ」
双子の兄は顔を覗き込むと、答える先に俺のパンを一かじりした。
「っ!?うまいな!」
「え、本当?僕も一口。……美味しい。今度僕も買おうかな」
「……」
何ということだ。
さっきまであった部分が、もう殆どないじゃないか。
虫食い状態になったパンを、口の中に放り込んだ。


