兄と弟。



ピーッとホイッスルの音が鳴っているのが外から聞こえる。

頬杖をつきながら視線を外に向けた。


どこかの学年が、サッカーの授業をしているらしい。

見覚えのある背中がシュートを決めていた。



「バカ野郎、俺が決めたかったのに!」


「え!?ごっごめんな……」

「ぷっ。冗談だよ」


そんな会話が聞こえて、ふっと笑った。



「……東(あずま)、問2を答えなさい」


「21」

「こほん、……よろしい」


答えると、先生は一睨みして授業に戻っていった。




昼休み。



「あ、弁当……」



鞄の中を見て気づく。

今日は購買でパンを買わないといかなかった。

適当に買ってくるか。


すぐ教室を出たところに、今朝の兄弟を見つける。



「……」



どうやら、向こうも気づいたらしい。

近寄ってきた。



「こんにちは。ほら、兄さんも」

「よっす!ん?購買か?」


「……」



厄介なことになったな。

断れない俺は、ついて来る二人をほっといてパンを買った。




兄を見つけたが、視線を逸らして屋上へ向かった。


……今は見たくない。

隣の女の子と一緒に笑っていた姿なんて。