兄と弟。

あまりに違う表情に、ピクリと動かなくなった。
俺はまさに、蛇に睨まれた蛙だった。
……しかし俺の隣には全然屈していない奴が居る。
「違いますよ兄貴さん。俺が無理やり連れて来たんで、明子さんを離してやってくれませんか?」
「……君は?」
冷たい視線が俺に向けられた。
「友達っす!今日で親友になりました」
ガシッと俺の肩に手を回して答えた野沢に、少し照れくささを感じて、肘で野沢の腹を攻撃した。
痛った!今のもろ入ったんだけど!という声が小さく聞こえる。
「……親友じゃなくて、大親友だから」
兄に向けて言うと、ふーんと呟いてから何も言わない。
やっぱり、雰囲気が違う。
まるであの時見た夢に見た、あの兄のような雰囲気をしている。
まるで別人のような、兄貴。
今まで見てきた兄貴は誰だったのだろう?
……すべて俺の気のせいなのだろうか。
「違う。俺はお前の兄貴だ。お前……雪が勝手に“優しい兄貴”に変換していた、兄貴なんだよ」