兄と弟。

兄貴が出て行ったドアを何気なく見つめる。
「……はは。滑稽だな俺」
言いそうになった自分を部屋で一人あざ笑った。
兄貴が最後に見せた表情を思い出して、胸がチクリと痛む。
兄貴に見られたくなかった自分を、見られてしまった。
兄貴に迷惑をかけてしまった。
兄貴を傷つけてしまった。
兄貴にあんな表情をさせてしまった。
済んだ後になって、急に罪悪感が押し寄せる。
冷たいひんやりとしたものが、頬を伝う。
嗚咽が出ないように、押し殺す。
あぁ。
兄貴は、優しい。
優し過ぎて
とても
眩しい
憎い
大好きな、兄貴。