兄と弟。

ピピピピッ…

音がして目が覚める。


「……朝か」


なんだ、今の夢。
眩しくないのに意味もなく手をかざす。


とても嫌な夢。悪夢。だったのは覚えているのに、どうしてかもやもやする。
それは寝起きだからだろう。

いつもの見慣れた天井を見て、昨日のことを思い出した。



『彼女が出来たんだ』


『そうなんだ、おめでとう』

『えっと、その、……帰るのがちょっと遅くなるかもしれない』

『分かった』


『……ごめんな』


そう言ってちょっと照れくさそうに笑う兄の姿。


嬉しいはずなのに、素直に喜べない自分。
なんで、どうして。
俺は、どうしてこんなに悲しいんだろうか。
分からない。どうして?


はっきりしない、もどかしさに胸が苦しくなった。


そういえば今日は学校だ。

一緒に朝ごはんを食べるなんて、今は気まずい。

兄貴には悪いけど、今日は、購買で買うように言っておこう。
制服に着替えて朝ご飯を作ると、ラップを付けて隣に書いた紙を置く。


よし、学校へ向かうか。

静かにドアをしめた。