兄と弟。

「落ち込んでるって……別にそんなんじゃないし」
別ニソンナンジャナイシ。
「お前の気のせいだよ」
野沢の手を離すと、きつくなっているマフラーを緩める。
「そうかなぁ……」
「そうだよ。俺は落ち込んでなんかない」
すると隣で笑う声が聞こえた。
「変なの。まるで自分に言い聞かせてるみたいな」
「……」
無言で返すと、ため息をつかれる。
ため息に視線を向けると、さっきまでの表情は消えていて、真剣な眼差しだった。
「まぁ言いたくないなら別にいいけど。何か困ったことあったら俺、助けるし」
頬を冷たい風が撫でる。マフラーで頬を隠した。
「……気持ちだけもらっとく」
「そっか」
残念そうでなく嬉しそうな声だった。
「オッケー!じゃあ相談する時の前払いでなんか奢って?」
「金取るつもりなら絶交だから」
「冗談だって」