「え、明子来てたの?言ってくれればケーキ買ってきたのに」
兄貴は俺達を見つけると、鞄とマフラーを手に持って近寄ってきた。
視線が紅茶の置いてある机に向かう。
「あ、紅茶淹れたんだ。ケーキ今から買ってこようかな……」
「えっ。い、いいよいいよ!すぐに帰るつもりだったから」
「……」
親しい会話。
今日見た夢と似ているような気がした。
兄貴が遠い存在になっていたことがひしひしと伝わってくる。
目の前にいるのに、……遠い。
「どうした?」
「え?」
「なんだか元気が無さそうだったから。なにかあったのかな、と思って」
「……」
気づかれた?そう思ったがすぐに仮面を貼りつける。
「別に。何でもないよ」
兄貴は何も知らないでいいんだ。ただ笑顔で居てくれたらいいんだよ。
「俺は部屋に戻るから二人で会話でもすれば?」
一方的にそう言うと、部屋へ行った。