--------------------
「どうぞ」
淹れたばかりの紅茶を女性の前に置いた。
「ど、どうも……」
緊張しているのか、彼女はうつむいて自分の拳を眺めていた。
「「……」」
静かな部屋に沈黙が訪れる。
数秒ぐらいすると、彼女は急に顔を上げた。
「あ、あのっ!弟さん……なんですか?」
「……そうだけど。それがなに」
「ええっと。なんだか目元が彼に似てるなぁと、思いまして。やっぱり兄弟ですね」
そう言うと彼女は、ふわっとした笑みを見せた。
不覚にも、ドキリとした。
あまりにも無防備な笑顔を見せるものだから、兄貴のことなんか忘れてしまうくらいで。
するとその時、玄関で兄貴が帰ってきた音がした。
「あ……。兄貴」
「帰ってきたんですか?」
「あ、あぁ」
気まずい。
避けていた罪悪感からなのかなんなのか。
口の中がカラカラになる。
ドアがついに音を立て、兄貴が部屋に入ってきた。