家の前まで来て人影が視界に入った。
女の人だろうか……、うろうろと挙動不審に何かを見ては歩いてを繰り返している。
「うーん、ここはここだから……あってる、はず……」
「……」
どうして俺の家の前にうろうろしているんだろう。
というか、後ろにいる俺に気づいてない?どうしよう。家に入れない。
考えるよりも先に口が動いていた。
「お困りですか?」
「え?」
女性が振り返った。ふわふわとした髪で、見慣れない顔をしていた。
驚いた顔をしていたけど、すぐに困ったような表情を見せた。
「その、実は彼の家へ行きたいのですが迷ってしまって……」
「彼の苗字は?」
「東、というのだけどどこか知ってる?」
東。
この辺ではあまりない苗字だから、俺の家くらいだろうか。
俺の知らない人だから兄貴の知り合いということになる。
「東ならここであってる。家で待ってたら?」


