夏祭りの日は、朝から落ち着かない。

何度も何度も時計を見ちゃって。
全然進まない針にイライラしちゃって。


やっと3時を過ぎた頃に準備開始。


シャワーを浴びて、メイクして、セットして。
いつもより、ぐーんと大人っぽくしたつもり。
浴衣を着て、準備万端。


だけど時計はまだ6時を過ぎたばっかり。


武ちゃんが迎えに来るのは7時を過ぎるのに。

浴衣がグチャグチャにならないように座ったまま携帯を見つめていたら、
武ちゃんからの着信。



「はっ、はい!」

『出るの早いな。まだ1コールしか鳴ってないけど?』



クスクス聞こえる声に、思わず赤面。



『あ、準備出来てる? 俺、もう家出れるんだけど』

「え!? 仕事は?」

『今日は、早く終わった』

「だっ、大丈夫! 下で待ってるね!」

『ん、後15分くらいな』



嘘?

嬉しいっ!



武ちゃんが、こんなに早く仕事が終わるなんて。


握り締めた携帯を巾着に入れ、鏡の前でメイクチェック。


完璧!



下駄を履いてすぐに外へと飛び出した。

待っている間、生暖かい空気が夏の匂いを運んで来る。

いつもなら、暑い。
それだけなのに、今日はワクワクと胸を高鳴らせた。