「え?」

「だから……帰るなっつってんの」

「な、んで?」

「好きだから」

「……」

「好きだから、帰って欲しくないんだよっ」



ぶっきら棒に言うと、俺は梓衣の香りに包まれた。


ギュッと力いっぱいに俺を抱きしめて泣く梓衣。

そんな梓衣の背中に手を回した。



「武ちゃん……武ちゃんっ」



何度も何度も俺の名前を呼ぶ声。



「何?」

「……うぅ。好きっ」

「うん」

「大好きなのっ!」

「うん」



それを何度も何度も繰り返す。

優しく頭を撫で、梓衣を落ち着かせた。