そう思った瞬間、手を差し出しちまった。



梓衣の手首を掴み、



「タク呼ぶから、待てよ」



そう呟いた。



「大丈夫。一人で帰れるから」

「夜も遅いし、駄目だって」

「いいのっ! お願いだから、もう……優しくしないで」



優しくしないで。



そんなの無理に決まってるじゃん。

俺はベッドへと座り、梓衣を見上げた。



「武ちゃん、離して」



涙を流して、俺に訴える梓衣。



わかってる。
わかってる。

わかってるけど。



「……行くなよ」



俯いた俺は、そう呟いていた。