「もし今……してくれないんだったら、あたし諦める。もう武ちゃんの事、諦めるから」
涙声が耳に響く。
そうだよ、このまま諦めた方が梓衣にはいいに決まってる。
「……やっぱり、そうだよね。
ごめんね。あたしがしつこかったから武ちゃんは付き合ってくれたんだよね」
そうじゃない。
そうじゃないよ、本気で。
本気で“好き”って思ったんだ、梓衣。
「今までありがと……。武ちゃん、大好き……だったよ」
一瞬詰まった梓衣の声が。
過去形にした言葉が。
胸が痛い。
ベッドから立ち上がる音が聞こえた。
このまま、このまま帰ればいいんだ。
そうしたら梓衣は……。

