【短編】俺の可愛い妹





「あたしが何とも思ってないって思ってた? 見て見ぬふりしてたのも気づかなかった?」



涙を流しながらも、強く話す梓衣に何も言えなくて。



「あたしが子供だから。そう思って我慢したよ?
だけど……今日は仕事だって言ったじゃん。
それなのに……酷いよ」

「あ……」



そうだ。



完璧忘れてた。

今日、梓衣に誘われてたんだった。



ハッとした顔を見せると、梓衣は俺から視線を外して



「もう……いいよ。もういい。武ちゃんなんて、もう知らないっ」



そう目も合わさずに、走り去ってしまった。



その場に、残された俺は動けなくて。

ただ、梓衣の涙だけが頭に残った。