「あたしが何とも思ってないって思ってた? 見て見ぬふりしてたのも気づかなかった?」
涙を流しながらも、強く話す梓衣に何も言えなくて。
「あたしが子供だから。そう思って我慢したよ?
だけど……今日は仕事だって言ったじゃん。
それなのに……酷いよ」
「あ……」
そうだ。
完璧忘れてた。
今日、梓衣に誘われてたんだった。
ハッとした顔を見せると、梓衣は俺から視線を外して
「もう……いいよ。もういい。武ちゃんなんて、もう知らないっ」
そう目も合わさずに、走り去ってしまった。
その場に、残された俺は動けなくて。
ただ、梓衣の涙だけが頭に残った。

