もし、今。



梓衣の気持ちを優先させて付き合っても、梓衣が気づいた時。


多少なりとも傷付くだろうし、後悔だってするだろうし。



何よりも俺との間が気まずくなるだろうから。

先に諦めさせなきゃいけないんだ。



「ねぇ、武ちゃん……」

「ん?」

「……うんん、何でもないよっ!」



曇った顔を無理矢理、笑顔にした梓衣。



「どうした? 何かあったのか?」



そう聞くのに、梓衣は笑顔で顔を横に振った。



「本当に?」

「もうっ、武ちゃんしつこいー」



玄関から出た俺を見送ってくれる梓衣にもう一度聞くと、怒られた。