全くわからないあたしが思い出した、さっきの言葉。
「あ、タツ兄が“ちゃんと”送れって言っといてって……」
目を見開き驚いた顔をした武ちゃんは、苦笑いをした。
意味がわからず首を傾げたあたし。
「帰るか」
ポソッと呟いた武ちゃんに
「えっ、もう?」
思わず言ってしまって恥ずかしくなった。
「さっきは突然消えたくせに?」
う。
武ちゃんの意地悪。
「俺の為に可愛い浴衣来てきたし?」
あ。
気付いてくれてたの?
「まだ一緒に居たいって顔に書いてある」
え。
嘘!?
どんどん赤くなる顔を隠す様に、俯いてしまった。
チラッと見上げた武ちゃんは悪戯な笑みを浮かべていたんだ。
「そんな格好して、変な奴にナンパされたらどーすんの?」
「されなかったもんっ」
「さ、れ、た、ら、逃げれる?」
「逃げるもん」
「相手が複数で、車に連れ込まれても?」
……。
「祭は危ないんだよ。だから、どっか行くな」
「はい」
“行くな”
こんな言葉が嬉しくて。
笑って武ちゃんを見つめた。
そうして合った目。
「だー! 行くぞっ」
パッと視線を逸らした武ちゃんの横顔が赤かったのは気のせいかな?

