……あたしも帰ろう。



1時間。


これだけ待ってて来ないなら、武ちゃんは来ないよね。

9割は探しに来てくれると思ってた分だけ凹む。



見上げた空は星ひとつなくて、何だか泣けてきた。

無意味に下駄の音をたて歩き始めた。



駅ってどっちなんだろう?
どうやって帰るんだろう?



涙を堪えながら歩く、あたしの腕が掴まれ同時に低い愛しい人の声が聞こえたんだ。



「梓衣!」



振り返ると、額に汗をかき呼吸の荒い武ちゃんが居た。



「た……けちゃん」

「はあっ。迷子? それとも、自分からいなくなった?」



怒った顔で、あたしを見る。



「……自分から」

「お前、いい加減にしろよ?
人がどれだけ心配したと思ってんだよっ!」



低い声があたりに響いた。


武ちゃんに怒鳴られたのは初めてで、恐くて目を逸らし俯く。



「ごっ、ごめんなさい」



堪えた涙一気に零れそうになる。



「取り敢えず車に戻ろう」



欝陶しそうに呟くと、あたしの腕を離し歩き出した。


その後を着いて行くしか出来なくて。
堪えていた涙は、瞳から溢れ出してしまいポタポタと流れ落ちてしまった。