「武ー?」



――ドーン

花火が鳴り響いたと同時だった。




向こうから歩いて来た綺麗な紫の浴衣の女の人と淡い黄色の浴衣の人。

そっちを向いた武ちゃんは、握ったあたしの手をパッと払うように離してしまったんだ。



「あ、やっぱ武じゃん」

「おー。何してんだよ」

「何ってお祭り来てる以外ないじゃんねっ」



その女の人達と笑い合う顔は、さっきまであたしを見ていた顔なんかじゃなくて。
大人の武ちゃんの笑顔に見えた。


まるで、あたしなんてその場にいないみたいに。



周りでは、皆が立ち止まって花火を見上げている。

そんな中、あたしだけが少し下を向いて武ちゃん達の足元を見ていたんだ。


ギュッと巾着の紐を握った手に力が入る。


まだ、楽しそうに話している武ちゃんを見ると紫の浴衣の人が武ちゃんのシャツを握っているのが目に入った。


そして、目線を上げると黄色の浴衣の人と目が合った。
楽しそうに笑っていたその人が、あたしを見て不思議そうに首を傾げたから、慌てて目を逸らしてしまったんだ。

逸らしてしまった、あたしの負けなのかな?

だから……



「てか、誰と来てんのー? はぐれたの?」

「えー、あー、まぁ」

「何だ、それ」



あたしと武ちゃんってはぐれたんだ。



「じゃあ、一緒に回ろうよ」

「いや、でも」

「いいじゃん、回ってたら見つかるって、ねっ?」

「あー、うん……」



その女の人と一緒に回るんだ。