私の右隣の席の彼が、急にふわりと宙に浮いたのだ。
その時私は、着ていたカーディガンを脱いで、椅子にかけようと横を向いた瞬間で、本当に何が起きたのかわからず、目が点になりながらゆっくり前に目線を戻した。
先生が彼の話題を低いトーンで話始める中、彼は私の頭上でいきなりケラケラと笑い出した。
その声は教室には不釣り合い過ぎて、私はすかさず左隣の席の人を見たがなんの変化もないのを見て、彼の声は私にしか聞こえていないのだとすぐに理解した。
そして、私が今まで見てきた彼の姿とは想像できない発言を彼は呟いた。
「ハァ。こいつ俺を使い勝手がいい生徒としてしか見ていなかったからなぁ。一回ブン殴っとけば良かった」
「…っ」
それを聞いた瞬間、涙ではなく、冷や汗が身体全体からブワッと湧き出た感覚に襲われた。


