「ごめん、私トイレ行ってくるね」
のあに小声でそう告げて、私は小走りでトイレへと走った。
トイレへ入って涙を拭い、数秒でトイレから出ると目の前に辻谷那央が立っていた。
「あ…」
「流石に他の奴に見えないからって女子トイレには入らねぇよ」
「…あはは、そこはキチンとしてるんだ」
本日の“主役”とこう普通に会話しているなんて不思議な気分。
場所が場所だけに彼を見ると少し悲しくなってくる。
「朝からずっとここに居たの?」
「ん、俺の葬儀場はどうなってるかなって見に来てた」
「沢山人来てるね」
「親戚多いからな」
「田邊くん…、いい人だね」
「…」
田邊くんの名前を出した途端、黙り込む辻谷那央。


