…ど、どうしよう。気づかないふりをするか、辻谷那央をチラ見してみるか…。 数秒、葛藤したが、気づかないふりをする事に決めて、即座に教室を出ようとした瞬間、私は見てしまったんだ──。 彼が涙を流している事に──。 「…あ」 それを見て、彼を見つめながら思わず声を出してしまった。 声に気づいたの彼は驚いた表情でこちらを見る。 私は目を逸らすのを忘れて、彼と目が合ってしまった。