「戸川、お前、俺の事めっちゃ嫌ってたくせに。…あ、顔が少しにやけてる。そっか、俺が居なくなって嬉しいのか」
次は戸川隼人が発言した時、彼は溜息交じりで呟く。
そして、戸川隼人の目の前まで行って、逆さまになり、宙から戸川隼人の顔を近くでジッと見つめている彼。
私はそんな彼の表情を見て息を飲んだ。
彼の表情は、目は鋭く睨み、本当にこの人は辻谷那央なのだろうか、と疑ってしまうくらい冷たい顔をしていたから。
それは戸川隼人に向けられたものではなく、クラス全体に向けられたものだとすぐにわかった。
だって、彼の周りを見る目は、誰かを憎んでいるような怒りに満ちた瞳だったから──。


