嘘だ。


「そうだったんですか。もう大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です」



篠原は得意の王子スマイルでにっこりと微笑むと、自分の席についた。




「では次に7ページの……」





「夕陽くん、あの子の怪我の手当てじゃなかったの?」



篠原の隣の席の女子がそう聞いているのが耳に入った。





ドキリ。


そうなんだよ、手当てしてもらって、そのあとが色々なんかよくわからなく…………





「うん。そのあとに、ちょっとね」


「そうだったんだ。でもよかった、よくなって」





篠原もバカじゃあるまい。


他のやつに、ベラベラ喋るようなことではないのをちゃんとわかっていた。