「みんな、ありがとう」
こいつはなおもあたしの手を掴んだまま、女子どもに王子スマイルを振りまきながら手を振った。
………な、なんなんだ…こいつ……
女子どもの姿が見えなくなったところで、こいつは振り返った。
「じゃあ、保健室行きましょうか」
「ぶっ」
「?」
こいつのあまりにも完璧すぎる笑顔に、思わず笑ってしまった。
「…あの、あたし怪我してないんで…戻ります」
そしてまた、その手をどけようと、もう一方の手を伸ばした。
しかし───
「怪我、してます」
「…は?」
「ほら、ここ。さっき助ける時に爪で引っ掻いてしまって…」



