“まさか お前って・・・”
その声が頭の中をぐるりと巡って私、瀬戸川真泉は目が覚めた。息が荒くベッドから降りるのさえ身体中の力が抜けていて出来ない。深呼吸をしようとした時、枕元の携帯がけたたましく鳴った。手を伸ばし、二つ折りのそれを開けると、画面には
“佐和 航市”の名前。
今はとてもこの電話に出れる精神状態ではなかった。
やがてその音は消え、またこの部屋に静寂をもたらした。
さっき出来なかった深呼吸をし、私はベッドを降りた。
支度を整え、私が三ヶ月前入学した 私立藍流学園 へ自転車で向かう。
「真泉、おはよう。三分遅刻。どうした?」
私は「ちょっとね。」とこの少し低い声の持ち主、松ノ宮瑠空に残し、楽器庫へ向かった。
そこにはサックスの手入れをしている桐生院花波がいた。
「あっ、真泉〜。何?今来たの?」
私は瑠空にしたのと同じ返事をして自分のサックスを手にした・・・。 “本当に?もしかして…だからあの時…”
またアイツの声が頭の中を駆け巡って私は身震いをした。
「 さて移動しなきゃね。今日はどこ?」
私は花波に問いかけた。…返事がない。花波がいた方向へ振り返ってみりと、そこにはもう花波はいなかった。