「柚ね‥もうこのまま目を覚まさないかもしれないのよ‥」


柚の頭をゆっくりと撫でながら、お母さんは言う。


「事故から6年、これだけの間生きられたのも奇跡的だって先生に言われたの」


今、その話しはしないでほしかった。


俺の中には柚がいるんだ。

柚が聞いている。


「柚がいなくなっても、この子を忘れないでやって‥」


「やめてください!」


俺は耐えられなくなり、叫んでしまった。


「柚は目を覚まします‥絶対に!柚とそう‥約束したんです」


そう、柚と約束したんだ。


「柚‥と?」


柚のお母さんは俺をおかしな子だと思ったかもしれない。
眠っている柚と約束したなんて‥


「そう‥ダメね私。私がこの子を信じないなんて‥」


(お母さん‥ごめんなさい‥)


柚は泣いていた。

俺はこの部屋にいることが辛い。


「柚は必ず‥目を覚まします。」


そう言って俺はカーテンの外に出た。


「また‥会いに来てやってね」


そう柚のお母さんに言われ、俺は病室を出た。