―――side 陸―――


まさか奈緒が別れたいって思ってたなんてな。

確かに最近俺の前であんま笑わなくなった。

なのに、あのヤローの前では満面の笑顔見せやがって。


イライラが収まらなくて、コンクリートの壁を思いっきり殴った。

この胸糞悪い気分のおかげで、拳の痛みなんか全然感じなかった。



アパートの近くまで行くと、背後から声を掛けられた。



「ぅおおおい!陸!」



振り返ると、そこには広樹が立っていた。

広樹とは中学からの付き合いで、今も時々つるんでいる。



「あ?何しに来た?」


「何しに来たじゃねーよ!何回も携帯鳴らしてんのに!」


確かにさっきから電話が鳴っていたが、イラついて誰とも話す気になれなかった。


「あー…わりぃな」