「えっ?」

驚く私に郁は、

「もう俺の檻に入ったんだから逃げられないよ。
ずっと・・・ずっと好きだったんだ。
『無理』なんて言われて諦められるような半端な想いじゃないからね。なら桃花をどこまでも捕まえる」




ちょっと待って。
郁は倒れて救護室に寝ていたのではないだろうか。


「い・・・郁、倒れたんじゃないの?」


抱きかかえられたまま苦し紛れに聞けば、

「桃を捕まえる罠だよ」

なんて白々しく答える。





「でもね・・・」

私の耳に口を寄せた郁に、身体が震える。


「俺は桃が居ないと・・・桃が隣に居ないと安心できません。
桃ほど一緒にいて居心地のいい人が居ません。
ここのところ桃不足で倒れそうでした。

もう俺は桃が隣に居ないとダメです。




だから、大人しく傍にいてください」





郁・・・それは私も同じだよ・・・



私は郁の顔を見るために、ぐっと手で郁の身体を押して離れようとした。

郁はそれでも離さない。



「郁、一旦離れて」


私の言葉に聞き耳を持たない郁。

・・・・・・仕方ない。