先輩と別れて、課長との待ち合わせ場所へと向かう。

夜道に私のヒールの音が響く。



「あ…。」



待ち合わせ場所に課長の姿を見つけて、思わず立ち止まる。

腕時計を見ながら何かを考えるように眉間に皺を寄せている。そんな姿すらも格好良い。



「課長、お待たせしました。」



課長に見とれながら声をかけると、こちらに視線を向けた課長と目が合う。



「行くぞ。」

「あ、はい…。」



私の姿を確認した瞬間に歩き出した課長。

なんか、もうすべての言葉を持ってしても、冷たいとか、冷徹とか、そんな言葉しか似合わない。


私、仮にも彼女だよね…?



「どこに向かってるんですか?」

「……何が食いたい。」



歩速を緩めることなく、そう問う。

どこに向かってたんだ一体。



「何でもいいです、お任せします。」

「…分かった。」



でもまあこの人のことだからきっと、私が何も言わなくても言わなかったでそのまま適当なお店に向かっていたんだろう。

何となく、そんな気がする。



課長に付いていくままに着いた場所は、居酒屋だった。



「焼鳥、それからビール。生の中で。」