いつにも増して声を荒げる岳大に
「な・なによ。たかが門限を破ったくらいでそんなに目くじら立てて怒る事ないじゃないのよ!」
  と陽毬は父親に対して反撃をした。




  すると
「なんだ陽毬。親に対してその口の利き方は。ちなみにまずは門限を破った事に対してキチンと謝る事が先だろう!」
  と、いつになくキツイ口調で岳大は陽毬に怒鳴った。




  そして普段よりかは数倍厳しい父親のその言葉にマジでビビったのか
「ご・ごめんなさい!」
  と、陽毬は仕方なく即座に岳大に謝って、そそくさと二階の自分の部屋へと退散した。




  でもって自分の部屋の中に入ると陽毬は机の片隅に置かれた写真立ての中で、静かに微笑んでいる母親に『ねえ、お母さん教えてよ!なんでお父さんはいつもあんな怒り方しか出来ないの?』と陽毬は心の中でそっと問いかけた。だがいくら問いかけてみても何も答えてはくれない雪乃に、次代に虚しさがこみ上げてきた陽毬の目からはたちまち堰(せき)をきったように大粒の涙が溢(あふ)れ出した。