翔の言葉に梨奈はパチクリと目を瞬かせた。
「え…?」
「じゃないとこの扉ぶっ壊すから。」
「え?!」
「多分めちゃくちゃ怒られるよ。梨奈が。」
「え?!翔じゃなくて私が?!」
「ほら早く。さーーん。」
「ちょっとま…」
「にーーー。」
「わっっ、わっ!」
「いーーーち。」
思わずガチャリと開けてしまった扉の前には。
17年間見続けた幼馴染みの顔があって。
梨奈はしばらく猫みたいな瞳を見つめ返して無言で立ち尽くしていたが、グイッと肩を捕まれ体の方向を変えられた。
「え?え?」
「はい、手を洗う。」
連れてこられた洗面台にお母さんみたいな台詞が飛ぶ。
梨奈は混乱しつつ言われるがまま手を洗った。
「はい、タオルで手を拭くー。」
また言われるがまま空色のタオルで手を拭き、梨奈は首をかしげる。
「はい、こっち向くー。」
釈然としないままくるりと振り返った梨奈を、翔はグイッと引っ張り唇を奪った。
「………っ?!」
え、…え、………え?!
初めてのふにっと柔らかい感触に、
どアップの翔の顔に、
回された力強い腕に、
梨奈は目を限界まで見開く。


