壁越しのアルカロイド


手を。

今まさに手を繋いでいる。


少し大きめの翔の指が自分の指に絡まって、


ダイレクトな体温が、


少しカサついた感触が、


梨奈の脳回路をアッサリと壊した。



『翔、あのさぁ…』

二人の間を、少し冷たくなってきた風が柔らかく通り過ぎる。

公園の草木がカサカサと小さく鳴った。

翔は後ろを振り返らず、いつもの口調で応える。


『何?』




…人より懐いてくれているのも、

一緒に帰るのも、

イベントごとにプレゼントを送りあうのも、

幼馴染だからと言う理由を添えることが出来る。

でも。

でもこんな風に手を繋いで道を歩くのは、

手を繋ぐっていうのは、、




『私達って、…付き合ってるの?』



梨奈はぼんやりしたまま、そう聞いてしまっていた。