壁越しのアルカロイド



『うわっ。』



翔と一緒に歩く帰り道。

梨奈は友人との余計な会話のせいでいつも以上にドキドキしていた。

普段通りにバカな会話も出来ず、翔に“ちょっと、梨奈、大丈夫?甘いものの食べ過ぎで頭に蟻でもわいたんじゃないの?”と毒のある心配までされてしまう始末。


相当ぼんやりしていたのであろう。


バスを降りてアパートへの近道で通る公園で、ちょっとした砂の凸凹に梨奈は足を取られた。

あ、と思った時には遅くて。

『(あ、転けた…。)』

反射的に目を瞑り、梨奈は歯を食いしばった。

しかし、ゆっくりと斜めになる体は、何故か地面に付くことなく。


気が付いたら、翔に腕を引き寄せられていた。

『…っ、危な…。』

『ご、ごごごご、ごめん…っ』

『どれだけぼんやりしてるの…。…熱でもあるんじゃないの?』

そう一見冷たく言い放つように翔は顔を少し歪めた後、何を思ったのかそのまま梨奈の手を取り歩き始めたのだ。


『(…へ?…は?…ほんがぁぁあっ‼︎)』