「ダンスは終わりましたよ。」
「…ああ。」
その光景を見つめることしかできない私の肩に、暖かいものが触れる。
「僕と帰ろうか。」
聞きなれた声。
「…ユル。」
ああ、どうしよう。
ユルの顔を見ると急に安心して、視界がゆがむ。
「もうちょっと我慢。」
「…うん。」
なんとなくその燕尾服の端をきゅっとつかむと、
「っ」
一瞬の金縛り。
「ユメイル。」
「はい。なんでしょう兄上。」
同じ声が、二つ。
「後で部屋に来い。」
「…御意。」
始まりに聞いた会話と、何かが違う会話。
積み木崩しは、始まったばかり。

